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【和訳&考察】ivy / Taylor Swift(テイラー・スウィフト)秘密の恋に悩む女性


 Taylor Swiftの"ivy"和訳と意味の考察です。

 この曲は結婚している女性が別の女性を愛してしまう物語だと思います。和訳のあとに、なぜそう思ったのか解説します。

 一説では詩人エミリ・ディキンソンと彼女の友人スーがモデルと言われています。

 二人は同性愛関係だったという説があります。私もこの曲を聴いて何となくディキンソンを連想しました。(理由は後ほど)

 ちなみにこの曲が収録されたアルバム『Evermore』はディキンソンの誕生日である12月10日にリリースが発表されました。

 

ivy / Taylor Swift(テイラー・スウィフト)

作詞:Taylor Swift, Aaron Dessner, Jack Antonoff

 

How's one to know?

どうやって知り合うの?

*1 I'd meet you where the spirit meets the bones

魂と骨が出会うところであなたと出会いたい

*2 In a faith forgotten land

信仰が忘れられた土地で

In from the snow

雪の中から

*3 Your touch brought forth an incandescent glow

あなたに触れられて白熱の輝きがもたらされたの

*4 Tarnished but so grand

錆びついているけれど壮麗に

 

*5 And the old widow goes to the stone every day

老いた未亡人は毎日墓石へと向かうけれど

But I don't, I just sit here and wait

私はそうしない、ただ座って待つだけ

Grieving for the living

生きている者のために嘆いている

 

Oh, goddamn

ああ、なんてこと

*6 My pain fits in the palm of your freezing hand

私の痛みがあなたの凍てつく手のひらに収まるの

Taking mine, *7 but it's been promised to another

どうか手を取って、けれど他の人と約束している

*8 Oh, I can't

ああ、できない

stop you putting roots in my dreamland

私の夢の国にあなたが根を下ろすことを止めさせるなんて

My house of stone, your ivy grows

私の石の家に、あなたのツタが育ち

And now I'm covered in you

今私はあなたに包まれている

 

I wish to know

知りたいの

*9 The fatal flaw that makes you long to be

Magnificently cursed

あなたに荘厳に呪われたいと願わせる

致命的な欠陥を

*10 He's in the room

彼が部屋にいる

Your opal eyes are all I wish to see

私が見つめていたいのはあなたのオパールの瞳だけ

He wants what's only yours

彼はあなたのものが欲しいだけ

 

Oh, goddamn

ああ、なんてこと

My pain fits in the palm of your freezing hand

私の痛みがあなたの凍てつく手のひらに収まるの

Taking mine, but it's been promised to another

どうか手を取って、けれど他の人と約束している

Oh, I can't

ああ、できない

stop you putting roots in my dreamland

私の夢の国にあなたが根を下ろすことを止めさせるなんて

My house of stone, your ivy grows

私の石の家に、あなたのツタが育ち

And now I'm covered in you

今私はあなたに包まれている

 

*11 Clover blooms in the fields

大地にクローバーが咲いている

Spring breaks loose, the time is near

春の気配が漂う、その時は近いわ

What would he do if he found us out?

私たちのことを見抜いたら彼はどうするんだろう?

Crescent moon, coast is clear

三日月が海岸を照らす

Spring breaks loose, but so does fear

春の気配が漂う、けれど怖くもある

He's gonna burn this house to the ground

彼はきっとこの家を焼き払うだろう

 

How's one to know?

どうやって知り合うの?

I'd live and die for moments that we stole

私たちが盗んで手に入れたこの一瞬のために生きて死にたい

On begged and borrowed time

懇願し、借りた時間の中で

So tell me to run

だから逃げろと言って

Or dare to sit and watch what we'll become

それか思い切って私たちがどうなるか座って見届けて

*12 And drink my husband's wine

私の夫のワインを飲みながら

 

Oh, goddamn

ああ、なんてこと

My pain fits in the palm of your freezing hand

私の痛みがあなたの凍てつく手のひらに収まるの

Taking mine, but it's been promised to another

どうか手を取って、けれど他の人と約束している

Oh, I can't

ああ、できない

stop you putting roots in my dreamland

私の夢の国にあなたが根を下ろすことを止めさせるなんて

My house of stone, your ivy grows

私の石の家に、あなたのツタが育ち

And now I'm covered in you

今私はあなたに包まれている

 

*13 So yeah, it's a fire

ええ、これは炎

It's a goddamn blaze in the dark

闇の中に燃え上がる火炎

And you started it

あなたが始めたの

You started it

あなたが始めたのよ

So yeah, it's a war

ええ、これは戦争

It's the goddamn fight of my life

私の人生の忌わしい戦い

And you started it

あなたが始めたの

You started it

あなたが始めたの

 

Oh, I can't

ああ、できない

stop you putting roots in my dreamland

私の夢の国にあなたが根を下ろすことを止めさせるなんて

My house of stone, your ivy grows

私の石の家に、あなたのツタが育ち

And now I'm covered in you

今私はあなたに包まれている

In you

あなたに

 

解説&考察

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YouTube Taylor Swift - ivy (Official Lyric Video)より

*1 I'd meet you where the spirit meets the bones

魂と骨が出会うところであなたと出会いたい

 

ミラー・ウィリアムズのCompassion(思いやり)という詩の引用。

 

 You do not know what wars are going on

 お前はどんな戦争が起きているか分からない

 down there where the spirit meets the bone.

 下りたそこ、魂と骨が出会う場所で

 

恋に落ちる相手とは、目には見えない人智を超えた深い場所(性別や社会的地位が関係のない魂の領域)で出会いたいと歌っています。

 

*2 In a faith forgotten land

信仰が忘れられた土地で

 

この歌詞はとても同性愛的に聞こえます。

キリスト教では同性愛は罪とされてきました。近年では迫害は薄れてきましたが、まだまだ問題視する教会はあります。主人公は、そういった宗教的束縛から逃れた土地で相手と知り合いたかったと願っています。

 

*3 Your touch brought forth an incandescent glow

あなたに触れられて白熱の輝きがもたらされた

 

鬱屈した(クローゼットな)日々で、相手は主人公に目もくらむほど眩い光を与えてくれました。

 

*4 Tarnished but so grand

錆びついているけれど壮麗に

 

「錆びついている(金属が変色している)けれど~」という表現は、この物語の舞台がディキンソンが生きた19世紀のように昔の時代であることを連想させます。こういった時代は同性愛がタブー視され、犯罪となる事も多々ありました。

 

*5 And the old widow goes to the stone every day

老いた未亡人は毎日墓石へと向かうけれど

But I don't, I just sit here and wait

私はそうしない、ただ座って待つだけ

Grieving for the living

生きている者のために嘆いている

 

墓地で夫の死を嘆く未亡人と、椅子に座ったまま悲嘆する主人公が対比されます。

「生きている者」とは相手の女性のことだと思います。彼女は冷たい夫と愛情のない生活をしていて("彼が部屋にいる""彼はあなたのものが欲しいだけ"の歌詞参照)、主人公は愛する彼女の辛い人生を思い悲嘆にくれているのではないでしょうか。

日本もそうだったように、欧米もよほど金銭的自由のきく女性でない限り結婚は半ば強制的でした。

 

*6 My pain fits in the palm of your freezing hand

私の痛みがあなたの凍てつく手のひらに収まるの

 

心に痛みを抱える主人公と、凍てつく手を持つ(=孤独を抱える)女性。二人は心を通わせあい、恋に落ちました。

 

*7 but it's been promised to another

けれど他の人と約束している

 

結婚式での「誓います」という宣言。夫がいることへの葛藤が表れています。

 

*8 Oh, I can't

ああ、できない

stop you putting roots in my dreamland

私の夢の国にあなたが根を下ろすことを止めさせるなんて

 

この曲で、最も美しく幻想的なパートの一つです。

相手の女性への気持ちは、主人公の心に逞しいツタの根のように広がっていきます。それは自然で、たとえ結婚していても(石の家であっても)抗うことができません。そしてそのツタは主人公の心全体を覆いつくしていきます。

ここで何となく思い出したのがディキンソンの『わたしは「美」のために死んだーが』という詩でした。

And so, as Kinsmen, met a Night —

それで、ある晩会った、親類として —

We talked between the Rooms —

わたしたちは部屋越しに語り合った —

Until the Moss had reached our lips —

やがて苔が唇にせまりー

And covered up — our names —

おおいつくすまでー私たちの名をー

岩波文庫 対訳ディキンソン詩集 亀井俊介編より引用)

この詩の苔(こけ)は「永遠」を、"ivy"のツタは「愛」を表現しているのではないかと思います。抽象的なものを植物で例える技法がディキンソンを彷彿としました。

全文和訳された方のブログ↓

nightinriver-22.hatenablog.com

また、ディキンソンがスーに宛てたとされる詩"One Sister Have I in Our House"は"Sue - forevermore!(スー-永遠に!)"という言葉で締めくくられています。アルバムタイトル『Evermore』を彷彿とさせます。

 

 

*9 The fatal flaw that makes you long to be

Magnificently cursed

あなたに荘厳に呪われたいと願わせる致命的な欠陥を

 

ここは解釈が難しいのですが、同性愛がタブーならば、それを破ると二人は(社会的に)”呪われる”ことになります。しかし、愛する者のためならばそれは”荘厳な呪い”です。

 

*10 He's in the room

彼が部屋にいる

Your opal eyes are all I wish to see

私が見つめていたいのはあなたのオパールの瞳だけ

He wants what's only yours

彼はあなたのものが欲しいだけ

 

この箇所の”彼”は、相手の女性の夫か恋人です。主人公、相手、相手の夫(恋人)の三人が部屋にいて、二人の関係を気付かれるのではないかと緊張する主人公の様子が伝わります。ちなみにスーはディキンソンの兄オースティンと結婚しました。

 

*11 Clover blooms in the fields

大地にクローバーが咲いている

 

「大地にクローバーが咲いている~彼はきっとこの家を焼き払うだろう」

二人が出会ったのは雪の季節。何度目かの暖かな春が近づきます。しかし二人の関係が周囲に知られるのではないかと、主人公は終わりの気配を察知しています。もし知られたら、彼女たちは罰せられ引き離されてしまいます。

 

*12 And drink my husband's wine

私の夫のワインを飲みながら

 

主人公は「この一瞬のために生きて死にたい」と覚悟しています。共に逃げるか、あえて堂々と腰をすえて夫のワインをたしなむ…そんな提案をする大胆さもありますが、他に選択肢がないという悲哀もにじんでいます。

 

*13 So yeah, it's a fire

ええ、これは炎

 

「これは炎~私の人生の忌わしい戦い」愛は燃え続けます。しかし差別や偏見との戦いがつきまといます。彼女と恋に落ちたことにより、主人公はそれと向き合わざるを得なくなりました。今後はおそらく夫との戦いも待ち受けています。

 

感想

 「今私はあなたに包まれている」という歌詞が、どうしようもなく相手に惹かれてしまう気持ちを表しているようで好きです。物語調で、小説を読んでいるような厚みのある曲ですね。

 テイラーの友人ヘイリー・スタインフェルドはドラマ『ディキンスン ~若き女性詩人の憂鬱~』で主人公を演じています。作中で彼女は同性愛者として描かれています。テイラーもそれを観ていた可能性がありますね。それか元から好きな詩人なのでしょうか。

 本解説で引用したエミリ・ディキンソンは1830年生まれで、1886年5月15日に亡くなりました。生涯未婚でした。生前は全くの無名で、引きこもって暮らしていたといわれています。しかしその詩は繊細であると同時に力強く、人の心の広大さを感じさせてくれる詩人です。未読の方には是非オススメします。

 個人的に、"ivy"は封建的社会に置かれた同性愛者の苦しみをとてもよく表現していると思います。彼女たちの未来が気になって仕方ありません。この二人がハッピーエンドを迎える続編の歌をぜひテイラーに制作してもらいたいものです。

 

※上記は全て一個人の解釈です。「こういう考え方もあるのだな」程度にお受け取りください。 

 

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